アミロイドーシスの鑑別

全身性アミロイドーシスの
主な鑑別

Amyloid typing

全身性アミロイドーシスに対する診療の目標は、適切な早期診断(病型解析)を行い、それぞれに適した疾患修飾療法による早期治療を行うことです。
その結果、良い状態を可能な限り長期間維持することを目指します。

本症に対する早期診断、早期治療を実現するには、適切かつ迅速なアミロイドーシス病型診断が重要です。

本疾患の診断基準について

Diagnostic criteria

本疾患の診断基準は、以下をご参照ください。

アミロイドーシスに関する調査研究班
全身性アミロイドーシス改定診断基準

日本循環器学会
2020年版心アミロイドーシス診療ガイドライン

3 疾患の鑑別

全身性アミロイドーシスの主たる病型は、トランスサイレチン型(ATTRアミロイドーシス)と免疫グロブリン型(ALアミロイドーシス)です。ATTRアミロイドーシスは、TTR遺伝子変異を伴う遺伝性ATTR(ATTRv)アミロイドーシスと、TTR遺伝子変異を伴わずに生じる野生型ATTR(ATTRwt)アミロイドーシスに分けられます。

すなわち、遺伝性ATTR(ATTRv)アミロイドーシス、野生型ATTR(ATTRwt)アミロイドーシス、ALアミロイドーシスの3疾患を鑑別する必要があります。

遺伝性ATTR(ATTRv)
アミロイドーシス

野生型ATTR(ATTRwt)
アミロイドーシス

AL
アミロイドーシス

アミロイドーシス病型解析(免疫組織化学染色)の結果

熊本大学アミロイドーシス診療センターでの解析例
(2020年1月~12月)

これら各病型に対して、適した疾患修飾療法は異なります。
以下の臨床的特徴をヒントに各病型を疑い、病理組織解析によるアミロイドタイピングを行いますが、本疾患に対する知識、技術と経験に基づいた判断が必要であり、一般的な医療機関では対応が困難な場合があります。

当院では過マンガン酸処理は行っていません

現在でも、病理学的な解析を行う際にコンゴレッド染色と共に過マンガン酸処理を行い、コンゴレッド染色性消失の有無でアミロイドタイピングを試みられる場合が散見されます。
本手法は古典的な手法でありAA型とnon-AA型を判別する手法とされていますが、アミロイドタイピングとしては不十分であり、判定を誤る要因となっている場合が多いため、当センターでは実施していません。

◆ 各医療機関でアミロイド病型解析が困難な場合、免疫染色化学染色の判断に迷う場合は、当センターで提供している「免疫組織化学染色によるアミロイドーシス病型解析」サービスをご遠慮なくご利用ください。

主たる全身性アミロイドーシスの鑑別と治療

遺伝性 ATTR (ATTRv)
(TTR-FAP)
野生型 ATTR
(ATTRwt)(SSA)
AL
(免疫グロブリン性)
AA
(慢性炎症)
原因蛋白質 (注1) 変異型TTR 野生型TTR 免疫グロブリンL鎖 アミロイドA
病態の進行 中等度 緩徐 急速 急速
症候 末梢神経 (注2) ++ + +
自律神経 ++ + -~+
手根管症候群 + ++ +
心臓 +~++ ++ ++ -~+
消化管 +~++ + ++
腎臓 + +- ++ +
肝臓 + ++
眼(硝子体混濁など)(注3) +
検査 ピロリン酸(PYP) 心集積あり(注5) 心集積あり 心集積なし 心集積なし
心筋シンチグラフィ (注4)
モノクローナル蛋白質 (注6) -~+(注7) ++
疾患特異的治療法 TTR gene silencing 療法
四量体安定化剤
肝移植療法(注8)
四量体安定化剤 分子標的薬
化学療法
原疾患 (慢性炎症)
の治療
(注1)
アミロイド原因蛋白質の同定には、免疫組織化学染色によるアミロイドーシス病型解析が有用です。
TTRがアミロイド原因蛋白質であった場合は、TTR遺伝子検査を行い、ATTRvアミロイドーシスとATTRwtアミロイドーシスの鑑別を行います。
(注2)
末梢神経障害は神経小径線維優位の障害が多く、病初期は両下肢の異常感覚、温痛覚低下を主体とした症候となります。
病初期には神経伝導検査で異常所見が認められない場合があります。
(注3)
眼アミロイドーシスによる硝子体混濁は、遺伝性ATTRアミロイドーシスで認めることが多いです。
(注4)
ピロリン酸心筋シンチグラフィーによる陽性像の判定には、3時間後撮影正面プラナー画像を用いた視覚的評価法(Grade 0 心臓への集積なし、Grade 1 肋骨よりも弱い心臓への軽度集積、Grade 2 肋骨と同等の心臓への中等度集積、Grade 3 肋骨よりも強い心臓への高度集積:Grade 2 以上を陽性とする)、あるいは1時間後撮影画像の定量的評価法(heart-to-contralateral[H/CL]比:1.5 以上を陽性とする)等により評価します。心室内プール像による偽陽性を防ぐためには、SPECT像による心室壁の評価が有用です。
(注5)
高齢発症の遺伝性ATTRアミロイドーシスでは、ピロリン酸心筋シンチグラフィーで心集積を認める場合が多いですが、若年発症の遺伝性ATTRアミロイドーシスでは、ピロリン酸心筋シンチグラフィーで心集積が認められないことが多いです。
(注6)
免疫グロブリン遊離軽鎖(フリーライトチェーン)κ/λ比、血清免疫固定法、尿中M蛋白(免疫固定法)を解析し、モノクローナル蛋白の有無を確認します。
(注7)
野生型ATTRアミロイドーシス患者で、モノクローナル蛋白質を認める場合があります。
(注8)
遺伝性ATTRアミロイドーシスに対する肝移植療法の実施数は激減しています。

腹壁脂肪吸引(簡便法) (アミロイドーシスのスクリーニング検査)

検査部位:
腹部臍周囲
採取  :
18G針、1ml注射器で皮下脂肪を採取
感度  :
遺伝性ATTRアミロイドーシスの場合、
腹壁脂肪生検の感度は80~90%
簡便性 :
上部消化管内視鏡より簡便 外来や病室で施行可能

家族性アミロイドポリニューロパチーの遺伝子陽性者における発症のスクリーニングでは、毎年生検(少なくとも腹壁脂肪・上部消化管内視鏡を)することが必要です

  • 消毒

  • 麻酔

  • 穿刺(皮膚をつまみ上げて)

  • 吸引(脂肪の中で陰圧をかける)

  • 穿刺(皮下針を2~3回往復)

  • 抜去(陰圧のまま)

  • ホルマリン液へ移す

  • 病理へ提出パラフィン封埋薄切染色(コンゴーレッド染色の指示)

腹壁脂肪吸引の方法(動画)

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